須坂市動物園日記

須坂市動物園飼育スタッフから情報発信!

投稿の詳細: 悲願!二ホンイヌワシのヒナが誕生しました!!

2025/05/07

悲願!二ホンイヌワシのヒナが誕生しました!!

2025年3月25日(火曜日)に二ホンイヌワシのヒナが1羽孵化しました!
須坂市動物園で数年前から取り組んできた二ホンイヌワシの「初めての繁殖成功」になります。
親であるメスの小楢(こなら)とオスの風輝(ふうき)の間で生まれた
初めてのヒナでもあります。
小楢のお腹で温められるヒナ
※風輝:2010年3月29日生まれ 小楢:2015年4月18日生まれ どちらも若いですが適齢期※

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:idea:二ホンイヌワシとは?
翼を広げると約2m、体重は2~4㎏と大型のタカの仲間。
日本に生息しており、国の天然記念物・絶滅危惧種に指定されており、
近い将来二ホンイヌワシが日本からいなくなってしまう可能性がある希少な生き物です。
野生下では500羽もいないとされています。
生まれても性成熟には4,5年かかります。
長野県にも生息していますが、ほんの数羽程度です。

絶滅に追い込まれている原因は日本の森の管理不足「間伐が行き届かない」・「日本の木を使わず輸入林を使っている」などで、
二ホンイヌワシのエサとなる野生動物が減っていることによる「エサ不足」や
人間による繫殖シーズンの妨害(写真目的で巣に近づく・近くにリゾート地などを立てる)などがあります。
解決策は、日本の森をエサとなる野生動物が暮らせる環境にすることです。
日本の木を使う・日本の森を管理する・林業を応援するなど、できることはたくさんあります。

絶滅から守るために11園館(2024年度時点)が二ホンイヌワシを飼育・繁殖を行っており、
長野県では二ホンイヌワシを飼育しているのは須坂市動物園のみです。
当園では、繁殖の取り組み以外にも、二ホンイヌワシが晒されている生息環境への理解を深める取り組みとして
長野森林組合とのコラボや園内でのガイドなども行っています。
増やすだけでなく、知ってもらう、好きになってもらう、守りたいと思ってもらうことが大切だと考え、
「二ホンイヌワシ」という生き物、二ホンイヌワシを取り巻く「環境」を
みなさんにもっともっと知ってもらえるように努めていきます。

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産卵から近日までの経過

2025年2月9日頃に小楢が巣から出てこなくなり、この日を「産卵日」としました。
それから44日間風輝と交代で卵を温め続け、無事1つの卵が孵化しました。
計2つの卵を産卵しましたが、1つは落ちて割れていました。こちらはおそらく無精卵だと思われます。
抱卵日数は約42日と言われているので、ほぼ予定通りの孵化となりました。

:idea:【2025年3月25日】
お昼すぎ、いつも通りにエサを台に乗せ、しばらくして様子を見に来たらオスの風輝の様子がおかしい…。
異様に羽を膨らませて放心状態。
放心状態の風輝

どうしたのかと驚いていたら、巣から「ピョピョ、ピョピョ」と細く高い声が聞こえてきました。
この時に卵が孵化したと思われます。
小楢はとても落ち着いた様子で、巣でヒナを介抱していました。
エサを食べに降りてきたはずの風輝はエサを食べるどころではなくなり、
しばらく羽を膨らませたまま遠くを見つめて放心状態になっていました。
放心状態2

イヌワシでも初めてのヒナ誕生にここまで動揺するのかととても驚きました。
いつも警備をしているようでしていない時がある少し抜けている風輝ですが、この日からガラッと人(鳥)が変わりました。
獣舎に出入りする飼育員に対してとても攻撃的になり、フェンス越しでも飛びかかってくるようになりました。
飛びかかってくる風輝
たくましくなった風輝にらみをきかせる
父らしくたくましい姿を見せるようになった風輝と、相変わらず冷静で頼れる小楢の、
初めての子育てが始まりました。
ヒナが巣立つまでの72日間、2羽で協力して子育てを行います。

:idea:【3月27日(孵化から2日後)】
巣の中を覗き、ヒナの姿を確認しました。
生後2日目のヒナ

巣の中央にいる白いもふもふは宇宙人ではなく生後2日目のヒナです。
目が大きく宇宙人感があり、このヒナがあのたくましいイヌワシの姿になるとは...想像できません。
力いっぱいピヨピヨ鳴いていました。まだ自分で体温調節ができないヒナは、親のお腹の下で温めてもらいます。
まだ寒い日がある時期でしたが、お母さんの体温で守られていました。
両親が頻繁にエサを巣へ運ぶようになり、ヒナもたくさん鳴いてエサをねだるようになってきました。

:idea:【4月7日(孵化から13日目)】
再び巣を覗くと、ヒナが少し大きく、顔がハッキリとしていました。
嘴と目がしっかりしています。
生後13日目のヒナ

この時期になると、ヒナらしいピヨピヨではなく、ヒャーヒャーとイヌワシらしい鳴き声に。
よく食べてくれているようで、両親は2羽で一緒にエサを巣へ運び、くちばしで小さくちぎって与えていました。
エサを運ぶ風輝
エサを与える風輝
見つめあう父と子

肉食の猛禽類は生まれたときからもちろん肉を食べます。
ヒャーヒャー鳴いては両親にエサをもらい、静かになった時には小楢の下で寝ているようです。
親子3羽
鳴いて食べて寝て、すくすくと育っています。

:idea:【4月15日(孵化から21日目)】
目がはっきり合いました。
先週まではこちらの様子を気にしていませんでしたが、この時から飼育員が巣を覗いてきたら
静かに伏せるようになりました。
生後21日目のヒナ

:idea:【4月21日(孵化から27日目)】
美脚を見せてくれました。太く長い脚がよく見えます。
顔だちもすっきりとよりイヌワシらしい顔になっています!
よく見ると翼の先が黒くなり始めています。
生後27日目のヒナ
お父さんの風輝と比べるとこんな感じ。
お父さんとヒナ

:idea:【4月29日(孵化から35日目)】
体に黒い斑点模様が出始めました。白いもふもふの羽が抜け、しっかりとした
茶黒い羽根が生え始めています。
この時に尾羽も生え始めていました。
生後35日目のヒナ
風輝とヒナ

:idea:【5月5日(孵化から41日目)】
生後41日目のヒナ
先週よりも羽が生えてきました。巣の1/4を占めそうなくらい大きくなり、変わらず飼育員が
巣を覗くと伏せて静かにし、去った後に鳴いてエサをねだったり、
巣の中を歩き回っているようです。
ヒナの本能はすごいですね。

現在も親鳥2羽でエサを運んで食べさせており、しっかりお世話してくれています。

:idea:これ以降の成長は、当園のSNSで報告していきますので、お楽しみに!

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生まれたヒナは、2025年の秋には次の繁殖期を迎える両親と別々にする必要があります。
1年もたたずに一人前になってしまうのです。
そのため、成長した子供は新しく建設した「新・二ホンイヌワシ舎」へ秋ごろに移動をする予定です。
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:idea:【命名募集】
生まれた二ホンイヌワシのヒナの名前を募集します。
命名募集の情報は改めて発信いたします。

=>これまでの繁殖経緯

  
2016年11月 同居開始
2019年  初めての産卵:2個、中止卵※有精だったが卵の中で発生途中・孵化直前で死亡。 
2020年  産卵:1個、中止卵
2021年  産卵:2個、無性、中止卵
2022年  産卵:2個、中止卵、破卵(有精無精不明)※割れてしまった。
2023年  産卵なし(隣の獣舎でシロフクロウの子供が飛び回り、ストレスからか?)
2024年  産卵なし(近隣での工事の騒音でのストレスか?)
→繁殖期は警戒心がとても強くなり、周りの騒音や人の視線を感じることでストレスになり、
 産卵がなかったと推測。

2025年2月  産卵:2個(孵化、破卵(おそらく無精卵))
→この年はイヌワシ舎に目隠しをし、人が巣を覗けないようにしました。
 日々の掃除やエサやりも極力1度で短時間で終わらせ、イヌワシ舎に入る入り口も
 巣の下を通らない方の出入り口を使用しました。
 繁殖期と周辺の工事が被らないように調整し、警備中のイヌワシと目を合わせないように、
 できるだけストレスを与えないように飼育した結果、
 例年以上に抱卵をしっかりと行っていました。
 産卵しても孵化しなかった年は、2羽とも巣から出てきて警戒モードになり、
 卵が冷えてしまうのも原因の1つだったと思われます。
 この結果を踏まえ、これからの二ホンイヌワシ飼育と繁殖、
 二ホンイヌワシが生息する日本の森林環境への
 理解を深めてもらうための活動を続けていきます。

繁殖シーズン・子育て中の二ホンイヌワシたちは警戒心が強く、ストレスをためやすいです。
たまに巣から顔を出していることがありますが、大きな物音を立てたりすると警戒して
隠れてしまいます。
静かに見守っていただきますよう、ご協力をお願いいたします。