須坂市動物園日記

須坂市動物園飼育スタッフから情報発信!

投稿の詳細: 「二ホンイヌワシの繁殖取り組みについて」

2022/04/12

「二ホンイヌワシの繁殖取り組みについて」

「二ホンイヌワシの繁殖取り組みについて」

須坂市動物園では、二ホンイヌワシの繁殖に取り組んでいます。

絶滅危惧種であり、日本の天然記念物でもある二ホンイヌワシの生息数は年々減ってきています。
そんな二ホンイヌワシを守るためのに、動物園同士で協力をしながら繁殖に取り組んでいます。
これまでの繫殖経過と、これからの取り組みについてまとめました。ちょっと長いですが、お付き合いください;)

2014年に秋田市大森山動物園より、オスの風輝(2010年3月29日生まれ)が来園。
その後、2016年に多摩動物公園よりメスの小楢( 2015年4月18日生まれ)が来園し、すぐに同居が始まりました。

同居後、2019年に初めて卵を産卵。
二ホンイヌワシの性成熟は5年ほどかかるといわれていますが、この時小楢(メス)の年齢は3歳11ヵ月で性成熟していたことになります。
有精卵ではあったものの、孵化にはいたりませんでした。

2020年も1つ産卵しましたが、ヒナの成長が止まり孵化しませんでした。
とても小さいですが、鳥の形をしています。

2021年は2つ産卵し、1つは無精卵。もう1つは有精卵だったものの、ヒナの成長が止まっていました。
孵化までもう少しでしたが、残念ながら亡くなっていました。

有精卵は産卵できるものの、孵化にはいたらない原因として「十分に卵が温まっていないのではないか?」と考えました。
実際、巣の中を覗くと、木の枝や葉などの巣材が運ばれているものの、卵は床の上に直にありました。
野生では1つの巣を何年も使い続け、どんどん大きくなるそうですが、須坂市動物園の巣は木で作られた小屋のような形をしています。
抱卵していると巣材がずれていき、本来巣材の上にあるはずの卵が床に直置きになっている可能性があると推測しました。

そこで、2022年の繁殖はいくつか改善を行いました。

①巣材が巣から落ちないように「ストッパー」をつける。
せっかく運んだ巣材が巣から落ちないように、巣の入口に10㎝のほどの板を設置しました。

②巣の底に「発泡スチロール」を取り付ける。
底冷えを防ぎ、保温効果を上げるために、巣の底に発泡スチロールの板を取り付けました。

③巣材の種類を増やす。
毎年スギの木や葉を入れていましたが、スギの他にアカマツ、モミ、バミューダを投入しました。

上記の3つを行い、様子をみました。
二ホンイヌワシの繁殖は「冬」。11月頃からオスとメスが交互に鳴きあう「鳴き交わし」が始まりました。交尾も確認し、たまに巣を覗いて巣材の運び具合もチェックしました。
巣材を増やしたおかげか、昨年よりも巣に運んでいる巣材の量が多く、しっかり厚みのある巣ができていました。

:idea:1月29日の朝、1つ目の産卵を確認し、しっかり抱卵もしていました。
卵が孵るのは約45日前後で、それまで夫婦で交代しながら卵を温めます。

:idea:2月2日の朝、2つ目の産卵を確認しました。しかし、床が見えていました。
卵の周りには巣材がしっかりありましたが、肝心の卵は床の上です。

巣材がずれないようにストッパーを付けていましたが、床から数センチ浮かせていたため、そこから巣材が出ていました。人為的に巣材を直接巣に入れてみて様子をみました。

:idea:2月17日、卵が1つ、巣から落下し割れているのを発見しました。
巣材が落ちない用のストッパーをつけていたため、なぜ落ちたのか、落としたのかは不明ですが、残念ながら1つは確実に孵らなくなってしまいました。

:idea:3月16日 孵化予定日です。しかし、近日2羽とも巣から離れていることが多く見られており、孵化する様子がありませんでした。孵化が近いと卵からヒナの鳴き声が聞こえるそうですが、それも聞こえず。もう少し様子をみて待ってみました。
      
:idea:3月26日 10日過ぎても孵化せず、卵を回収しました。
卵を割って中身を確認してみると…。

昨年度よりも少し小さいですが、体はほぼ出来上がっていました。
残念ながら、孵化まであと数日というところで力尽きてしまったようです。

11月頃からせっせと繁殖の準備をし、約50日以上卵の面倒を見ていた2羽ですが、残念ながら2021年度の繁殖は成功しませんでした。
なぜ、今回の繁殖がうまくいかなかったのか改善点を探し、試行錯誤しながらまた来年の繁殖に取り組んでいきたいと思います。

繁殖シーズンは警戒心が強くなり、獣舎に入ってくる飼育員の頭上を追いかけたりしていましたが、現在は落ち着いています。
風輝と小楢はいつでもラブラブで、繁殖シーズン以外でもよく寄り添っている姿が見られます。
来年の繁殖は、2羽の頑張りが報われるよう、動物園としてできるだけサポートしていきたいと思っておりますので、これからも見守っていただけると嬉しいです。
最後までご覧いただきありがとうございました:roll: