須坂市動物園日記

須坂市動物園飼育スタッフから情報発信!

投稿の詳細: フンボルトペンギンの三度目の脱走の経緯と対応について

2012/08/21

フンボルトペンギンの三度目の脱走の経緯と対応について

ご報告が遅れましたことお詫び申し上げます。

8月14日の二度目の脱走以降、早朝からのペンギン舎
の羽数確認と異常確認や行動の観察を続ける中で
経路の封鎖法を検討し、部材の発注を同時に行って
きました。

が、本日早朝三度目のペンギンのヒナ(若鳥)
がペンギン舎から脱走し、途中動物園外へ出ないような
措置も14日以降こちらの
対策も実施してきましたが、三度(みたび)竜ヶ池内で
発見、約1時間後に捕獲いたしました。

早朝6時に職員が確認したところ、1羽少ないことに
気付き、園内を捜索したところ、園路にペンギンのものと
思われる糞があり、竜ヶ池方面に移動したと判断し、
竜ヶ池を捜索したところ、午前6時30分近くに池にいる
ところを発見し、午前7時より職員が揃ったところで
ボート5隻で捕獲を実施し、午前8時10分に捕獲しました。

その後、脱走の検証を行いましたが、幅3~5センチの
ペンギン舎のプールに足をかけて高さ40センチの開園当初
より設置されているプールの基礎の
外柵を垂直に飛び越えたことが
2度目・3度目の脱走の経緯だと考えています。
また園外へ出ないように対策した園路途中のネット
(注・下はくぐれないように設置)
更に高い60センチの高さでしたが、これも飛び越えてしまい
池に入ったようです。


すでにアクリル板が設置してあり、反射してわかりづらいですが
右側がプール、中央が基礎部。数センチの基礎に足をかけて
垂直に真上に飛び上がることで脱走していたようです。
プールに水が張られると上がることはかなり難しいので
すが、水がないと踏ん張りが利くので上がることができるようです。


外側から見た写真。

こちらの経緯に関しては、前日20日の午後12時10分
にプール掃除のために水を抜き、清掃作業後に水をはって
いたところ、来園者の方の前でプールの底に足を着ける
ことから、床面に体重をかけて基礎に前足をかけて再度
垂直に飛び前述の40センチの柵を飛び越え、出たところ
を職員が発見して、すぐにプールに戻し、前日の夕方に
プールの水が満水になると、足は着けないため陸からプール
の基礎面に歩いていけると思われる部分でありまたそこから
飛び上がるであろう部分に
「返し」を設置し対策をしました。

こうした対策を講じながらも、今朝3度目の脱走になり、また
途中に設置したネットも越えられたことから、本日午後より
以下の措置を行っています。

1、現状のペンギン舎での対策では部材が揃っていない
  ため、少なからず脱走の危険性があることから
  ペンギンの若鳥(ヒナ)を現在、カピバラを飼育している
  施設の空いている獣舎(今後はカピバラの寝室として利用予定)
  に移動し、1週間~2週間隔離飼育を行う。
  こちらは施錠が可能であり、水掃除も可能となっており
  現ペンギン舎の改修工事時にペンギン飼育に利用した前例が
  ある。
  この間に、職員の手差し給餌のトレーニングを行っていく。

2、この間に計画していた対策の部材を発注し、設置していく。
  間に合わない部材や対策が緊急に出来ない部分の対策が
  全て終り次第、隔離したペンギンたちを戻し動きを観察し、
  ペンギン舎内で採餌がしっかり行えるようにする。

  現在は、プール周りに基礎よりアクリル板を設置し、プール
  前は約95センチの高さまで覆ってありますが、透明のため
  展示・観察に支障はありません。
  今後はペンギン舎内の岸壁に見立てた階段の園路側への
  設置をしていきます。

2度目・3度目の脱走した個体は同一個体であり、日々の観察
の中での判断ではありますが、以下の点が脱走原因だと考えています。

1、8月半ばより親鳥から若鳥の「親離れ」が始まり、口から口への
  給餌量を減らして、自力採餌を促している。
  早くにふ化し育った若鳥は、すでに水中内に投げ込まれた
  アジを採餌しはじめており、行動が安定してきている。
  が、脱走個体は一番最後のふ化個体で一番早い個体より
  2週間近く成長に差があり、他の三羽のような行動から一歩
  遅れており、自力採餌にまで至っておらず、空腹状態で
  あり、体も軽く空腹を満たすために外へ出て
  「池(本来であれば海)」へ向かったのではないかと推測して
  います。

  そのため、隔離している間にしっかりと職員から採餌を
  可能にしペンギン舎内で空腹を満たすようにトレーニングを
  行っていきたいと考えています。

2、またこれまで40年ほどの中で前述のように、開園当初から
  ある40センチの高さの柵を乗り越えるという個体が存在せず
  ペンギン舎の中の群れ管理が比較的安定していたことと
  1シーズンに4羽の若鳥が一斉に巣立ちし同時に成長する
  という前例がなかったことも経験測による判断に遅れが生じた
  ことに繋がったと思われます。
  ここ10年は年に1羽の繁殖がほとんどで若鳥は大人のペンギン
  たちの中で成長していましたが、同時期の若鳥と一緒に
  なると「やんちゃざかり」の相乗効果で好奇心が倍増し、行動の
  幅も広くなっていたようです。

現在のペンギン舎が新しくなって初の繁殖事例に複数繁殖が重なり
これまでの経験にないことが起きて対応や判断が後手になってしまった
ことが原因ではありますが、こうした経験を糧に継続して
複数繁殖を成功させ、今後はこうしたペンギンの若鳥たちの巣立ち後
の行動実例を糧に安全かつ安定した飼育に繋げていきたいと考えています。

まだ様々な課題がありますが、近隣・関係者の皆様には重ね重ね
お騒がせし、ご迷惑をおかけしましたこと深くお詫び申し上げます。


22日の早朝の写真です。外から見ようと思えば見えますが
まだ隣に見知らぬ動物がいるため、緊張しているようです。


カピバラは一つ空間を置いて飼育をしていますので、直接見たり
接することが互いにないようにしています。

コメント:

コメント: ふ~姉さん [訪問者]
三度目の脱走・・・空腹だけでなく冒険心からでもあるのなら、一日一回リードを着けてのお散歩が出来ればいいんですけどね~。

でも、自由じゃなきゃ満足出来ないかぁ。。

毎回、奇跡的に無事で良かったです!
永続的リンク 2012/08/21 @ 23:09
コメント: みー [訪問者]
地元が注目されていてちょっと嬉しいです。
お散歩、面白いですね!
イベントや季節限定とかでもぜひ見たいです。
ハッチに続く全国区のアイドルになってほしいな!
永続的リンク 2012/08/22 @ 00:19
コメント: はむちん [訪問者]
無事で本当に良かったです。

空腹から脱走したとしたら、かなりたくましい子ですね。
これからも元気に育って欲しいです。

池でご飯食べられたんですかねえ。

お腹いっぱい食べさせてあげてください。


永続的リンク 2012/08/22 @ 00:38
コメント: naname [訪問者]
何度も脱走するなんてかわいいなぁと思っていたけど、外への興味だけではなくて、お腹がすいているのも原因かもしれないし、他のペンギンから何かされているかもとか思えたりもして…カメラを設置して確認してみたらいいのにと思います。そしたら、フェンス越えの衝撃映像も見られたかも?
隔離されてかわいそうな気もしますが、大切にしてもらって、またいつもの場所で元気に育ってほしいです。
永続的リンク 2012/08/22 @ 02:33
コメント: 須坂市動物園 [メンバー]
お騒がせして申し訳ありません。また温かいコメントありがとう
ございます。
毎回、不幸中の幸いでケガもなく捕獲に至っているのが
不幸中の幸いです。

22日に写真をアップさせていただきました。
永続的リンク 2012/08/22 @ 06:46
コメント: もも [訪問者]
ペンギンに反省してもらうって仰ってましたが、ペンギンより飼育員さん達が反省して頂きたいです。
お腹いっぱい食べさせてあげてください。
飼育員さん達が一生懸命なのは分かりますし、色々決めつける気はありませんが、やっぱり動物は自由が一番だと思ってます。
動物園の動物達は本当に幸せなのかなぁ。
(;_・)
永続的リンク 2012/08/22 @ 09:26
コメント: シルキー [訪問者]
ぎゃー、アメリカのabc newsで報道されている!
http://abcnews.go.com/WNT/video/penguin-escapes-japanese-zoo-times-ten-days-17053392
永続的リンク 2012/08/22 @ 09:45
コメント: めろ [訪問者]
せっかく自由で幸せに泳いでいたのだから、自由にさせてあげればいいのに・・・と思うのはしろうとの浅はかさですか?

その池にいることで発生する問題って何があるのでしょうか?ペンギンの身体に悪い?外敵に襲われる?なにが問題なのか説明してほしいです。

いっそのこと旭山動物園のペンギンのお散歩のように一日一回池までお散歩させてあげるとか?
そうすれば集客も違うと思うのですが。
永続的リンク 2012/08/25 @ 13:59
コメント: 須坂市動物園 [メンバー]
めろ様にご質問にお答えしますね。そういったお声もありますので。

1、当園のペンギンは須坂市及び須坂市動物園が所有する飼育動物であり
  また絶滅危惧種第一種に指定される種にしていされるため、国内
  全てのペンギンは血統番号が付けられており、繁殖や異動には動物園
  水族館協会の指定したコーディネーターの指示や環境省の許可の下
  に行われており、個人の都合や判断で管理の行き届かない場所に放す
  ことは「放置」に属することかと考えられます。
  動物園は「動物取り扱い業」の指定と認可を受けておりますし、こちら
  の取り決めや法に係わる部分に反すると思われる行為は出来ません。
  

2、仮に竜ヶ池は当公園管理事務所の管理地としても、野生下では
  海に生息するペンギンを淡水の中に置くことは衛生上という問題で
  なく、淡水の抗体の少ないペンギンにとっては疾病発症のリスク
  も多く、長期間の生息は困難であると考えられます。
  飼育下では水道水を使用しており、海水でないとダメではありませんが
  各施設ではろ過機を用いてなど水質の管理をしっかり行っており
  当園でも週に一回~二回消毒と洗浄を行っており、餌に魚も海水魚の
  アジを使用しています。

3、外敵・・・猫が野生のカモを捕食することもありますし、公園の
  すぐ側には民家もあり犬を飼育されているご家庭も多くあります。

4、散歩と池に放すことは、目的やそこにいたる過程や方法論や
  トレーニングが違うと思いますし、旭山動物園は冬季限定かと
  存じております。また、ペンギンの種も違うと思います。

つまり、これだけのリスクを誰がどのように回避するのか、どれだけ
生命維持できるのか、淡水(自然下での)での管理の前例・成功例が
あれば判断材料にもなりますが、残念ながらそれを可能だと言い切れる
情報や事例を当園は保持しておりません。

まず、そうした飼育管理や、種や生息地そこでの管理を可能・不可能の
情報収集や学習のためにも全国の動物園や水族館があるのかと
考えます。(当園はそこまでの域に到達しておりませんが、そうした
役割やきっかけの場になればと、こうした事例を糧として向上していきたい
と日々業務に励んでおります。)

あくまで、参考になればと思いコメントいたします。


永続的リンク 2012/08/25 @ 21:00

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