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投稿の詳細: 動物園で実証実験
2022/10/15
動物園で実証実験
先月のことになりますが、
企業からの依頼を受け動物園での実証実験を行いました
何のための実験かというと、動物の忌避装置開発のための実験です。
今回依頼のあった企業では数年前より、
動物の侵入や遭遇回避に関する機器の開発をされてきたそうです。
そして今回実証実験の依頼があったのは、
登山者や山間部の農作業者のための小型携行用の機器で
主にクマに対する忌避装置として開発中とのことでした。
野生動物との接触事故防止に役立つのであればと協力することにしました
ということで、実験対象になったのはニホンツキノワグマのケン♂です。
特別痛い思いをさせるようなことはもちろんありませんが、
忌避装置の実験なので〔どんな反応があるか、嫌がるかどうか〕などの反応をみる実験です。
具体的には機器から出す超音波によるクマの反応をみます。
実験は忌避装置開発をされているセントラル警備保障株式会社の方と
信州ツキノワグマ研究会の方の立会いで実施しました。
そして今回の実験機器はこちら、超音波を出す機器です。
※携行用は現在開発途中とのことですので今回使用した機器自体は設置型機器で大きいです。
クマとの距離や超音波の周波数を変えながら反応をみていきます。
まずは50m離れたところから、とクマ舎から距離を測り始めたら。。。
園外へ出ることになり臥竜公園の弁天橋からスタートすることになりました。
クマ舎は園内の端っこなので想定はしていましたが。。。
※正面の赤い橋が弁天橋。そこに機器を操作する方がいます。
初めは低い周波数から、反応をみながらいくつかの周波数を試して、
10mずつ距離を縮めていきます。
↓写真で確認しにくいですが、写真右奥の方に機器を持った方がいます。
↓左側がクマ舎。クマの行動に変化がないか見ています。
40mまでは特に反応がみられなかったのですが、
20mまでくると園内で実施する距離になりクマからも実験者が見えるところまできました。
そこでようやく反応が見られました。
機器のある方を向き、耳を立てて気にしている様子です。
数秒間ほど「なんだろう?」というような感じで行動を止めていました。
その後も行動をみながら実験を進めていきましたが、
明らかに嫌がって逃げるなどの忌避行動はみられませんでした。
しかし、いつもよりそわそわしている様子があったのは確認されたので、
逃げるほどではないけれど何か違和感のようなものは感じていたようでした。
飼育下では日頃から人間の出す音や声、機械音なども聞きなれていますので
大きな恐怖感までは抱かなかったのではないかと思います。
今回の実証実験がどの程度お役に立つのかわからないのですが、
クマ担当者としてはクマの行動や生態について考える良い経験になりました。
ニホンツキノワグマについてはあちこちで人間との接触事故のニュースを聞くので
生息数も多いのだろうと思われているかもしれませんが、実際は減少傾向にあります。
クマは危険で怖い動物という印象が残ってしまいますが、
本来は警戒心が強く怖がりな面があります。
クマの方から「人間に遭遇するなんてとんでもない」と思われているかもしれません。
クマと人間との適度な距離はクマの生活環境を守ることにつながっていくことを
改めて考えるきっかけとなりました