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いくいく Mura3

投稿の詳細: 連載コピペ最終回

連載コピペ最終回

すみません。。。

更新が滞りそうなので連載、一気にアップします。

[続き:]

【4月24日 はれ】

「なんとなく、会いたかったから。」早紀は、デパートの紙袋をもって俺の部屋にあがる。
「今日はね、すごいんだよ。 チーズフォンデュするの!」といつものようにはしゃぐ。
・・・いつもと変わらないけど。 でもなんか変。
食事をここですることを英子さんに伝えたのかと聞くと、それも済んだって。
・・・どこか変かわかった。 ちょっといつもより、暗い方向にハイテンション。
ニュアンス伝えずらいな・・・・

夜も遅くなり、俺は早紀の終電の時間を気にした。
「そろそろ帰らないと。 電車なくなるぞ。それに明日大学だろ。」
「あ、ううん。 あのね。」
「ん?」
「今日、お父さんもお母さんもいないの。 お父さんはいつものように遅いんだけどお母さんも今日はずーっと帰らないって、書置きがあったの。」
「ふぅん。」
「・・・でね、一人ぼっちで家にいるのはすごく怖いから・・・」
「・・・・」
「今日、泊めて。」
「え。」
「お願い。」

早紀は、笑顔で俺を拝んだ。
でもちょっと涙目だった。

【4月24日 はれ】

今早紀は、風呂に入っている。
テレビを見ている俺は、テレビの内容を見ていなかった。
タバコを吸っている俺は、なんか落ち着かなかった。
「バスタオル貸してーー」とバスルームから早紀が呼んだ。
俺はタオルを早紀に手渡す。
なるべく早紀を見ないように。

早紀が風呂から上がる。
着替え(というかいつものパジャマ)までちゃっかりちゃんと持ってきていた。
「ちょっとちょうだい」と、俺が飲んでいた牛乳を早紀にわたすと、俺はすれ違いに風呂へ。 
なぜかいつもより念入りに洗ってしまう俺。
何してんだ。
頭に血がのぼってきて、のぼせそうになった。
マジでどうにかしそうっぽい。

風呂から上がり、俺と早紀は、借りておいた映画を見ていた。
ラブロマンス物なんかみている俺ら。
まずいって。
映画が終わると、早紀は俺の肩に頭の乗せてくる。
「もう12時だよ、マジで明日大学とかないの?」
「明日講義ないもん。」 
といいながら、俺のひざの間にすわり顔を近づける。
そのまま、いつものようにキスをする。
風呂上りのほかほかな香りがまだちょっと残っていた。
「ふふ、あったかい。」早紀は俺にもたれかかり目を閉じる。

明日、会社休もう。 もうこれは決定。

【4月24日 はれ】

何回か唇を舐めあった後、早紀の首筋に鼻をあてて動かしてみた。
「早紀、いい匂いする。」
「んふふふ、なんかくすぐったい。」
こういうときって、どうしても早紀の胸に手がいってしまう。
理性? もうほとんどいないよ?
「泊めて」とお願いされたときと、OKした後の早紀の表情の格差がなんだか頭からこびりついて離れない。 
どうしようもなくかわいく見えたからしょーがないって。

早紀は正座してるかっこうなので、つらいかなと思い、
早紀を抱えて、正面へ向けて、後ろからだっこするような形にさせた。
早紀は必死にこっちへ向こうとする。
「お兄ちゃんの顔が見えてないと、やだ。」って早紀は体をひねろうとする。
だから俺も早紀に顔を近づける。 
早紀が首をあまり動かさなくてもキスできるくらい。
「何かあったのか?」
「ううん、何にもないよ」早紀は作り笑いととれる表情で答えた。
俺が少し早紀の顔を何も言わずに見つめていると口をひらいた。
「最近起きてるのが辛いの、ここ一週間は学校に行っても講義を受けられないくらい」
早紀の顔が急に暗くなるのがわかった。
「でもお兄ちゃんといるときだけは不思議とその眠気がなくなるような気がするの」
それは気のせいだ、俺といてもちょっと目を離すと寝ている事が多い事は気が付いていた。
もう時間があまり無いのかも・・・といいかけた早紀を俺は強く抱きしめた。
というか、自然に抱きしめていた。

「それとね・・・」と早紀が。
まだ何かあるのかよ。

【4月24日 はれ】

と、そのとき、俺の携帯が鳴り響いた。
条件反射的にお互い体を離す。
しばらく着メロが流れているこの状況にボーっとしてた。

あわてて、電話にでる。
親父からだった。
「なぁ、早紀、そっちに行ってないか?!」
俺はちょっとあせった。
「早紀なら、うちに泊まっている。」と伝え、事の事情を話すと、すぐに向かえに来てもらうことになった。
とりあえず俺は早紀に服を着せて、自分も服を着た。

「早紀、なんでウソついたんだ?」
「・・・・」
「親父言ってたぞ。 英子さんも今日は別に家を空けていなかったって。」
「・・・・」
「急に早紀が家からいなくなるからビックリしたって。」
「・・・・」
早紀は、だんだん泣き出した。
俺は別に怒って聞いたわけじゃないのに。

【4月24日 はれ】

しばらく早紀を抱きしめて、泣き止むのを待った。
なにかあったんだろうか。

落ち着いてきた早紀に事情を聞く。
「最近ね。 お父さんとお母さん、よくケンカするの。」
「え?でも、メールとかの話じゃ、そうでもないような・・・」
「ゴメンなさい。 でもね、お父さん、最近、早く帰ってこれるようになったの。いまだに、遅く帰ってくるっ、のって、うそなの。」 また早紀は涙目にもどった。
「??よくわからない・・・どういうこと?」
「逆にお母さん、よく家を、空ける、ようになった、の。 で、お父さん、とお母さんが、、、」
そこまで言って、早紀はまた泣いてしまった。

1時間後、親父と英子さんが迎えに来た。 
俺は親父に、なにが起きたか説明を求めたが、無表情で
「今度、お前、時間とれるか? ちょっと話があるんだ。」とだけ言って、
早紀を無言でつれて帰っていった。

いったいどうしたんだろう。

【4月29日 はれ】

緊急家族会議の為、久しぶりに実家に戻った。そこで衝撃的な事実を知った。
親父の事務所が倒産したらしい。
 
親父は必死に「だまされた」と言う。
よくわからねーけど、悪い言い方すれば負け犬のセリフに感じた。
どんなときでもグチをいわない、サッパリした、そんな親父しか見てなかったから、、、
倒産直前まで、親父は夜は清掃員のアルバイトをしていて、
倒産させられてからは、英子さんもパート勤めをするようになったらしい。

それよりも、家族会議の中で、早紀はずーっと泣いていた。
親父もなんか変わった。
英子さんも疲れた表情だ。
借金もいっぱい出来ただろう。
自己破産はしたくないらしい。

俺にも借金返済の協力要請が出された。
別にいいけど、息子に必死に頼み込む親父の姿、、、
とても見ていられなかった。
俺まで悲しくなった。
この家も出て行かなくてはならないらしい。
早紀の治療費はどうなるんだろう。

早紀は「お父さんとお母さん、喧嘩しないで」とずーっとつぶやいていた。
親父は、英子さんがしゃべるセリフに対して、なにかしら不満をぶつけた。

あの親父をここまで変えた出来事、いったいどんな騙され方にあったのか。 
あの明るい英子さんをいっきに老けさせた日々、いったいどんな苦労があったのか。
そして、早紀をずーっと怯えさせていたこの家の空気、いったいどんなものだったのか。

それらを背負い込む勇気、俺なんかにあるわけがないよ・・・・・

【5月1日 はれ】

あれから、親父と英子さんは別々に暮らすことにした。
しばらくひとりになって、ひとりで暮らして、ひとりでがんばって
もう一度やり直すそうだ。

早紀はというと、俺がなんとか必死に説得して、俺が引き取ることになった。
別に親父らが離婚するわけじゃないけど、
よほどのショックがあったのか、
「おとうさんとおかあさんとはいっしょにいたくない」って震えるばかり。
大学の学費だって、家庭の事情で免除してもらえるし、
会社の借り上げマンションだけど、内緒にしとけば問題ない。 
周りの住民はまったく会社とは関係ない人たちだから。
それから俺は英子さんに早紀の主治医の先生を教えてもらった。

【5月1日 はれ】

早紀と一緒に夕食を買いに出かける。 
「なにが食べたい?」なんて笑顔で言うし、試食コーナーではしゃぐし。
あれから早紀はだいぶ元気を取り戻したみたいだ。 
ただ買い物カートをキックボードにするのはやめてくれって、恥ずかしい・・・

家に帰り、いっしょに夕食を作る。
サラダ用の卵マヨネーズをつまみ食いすると、早紀も口をあけて俺を見る。
指に乗せて、早紀に舐めさせる。 早紀は俺の指をくわえたまま、目を細めて笑う。
一人暮らし(だった)のサラリーマンの食卓にしては、やけに豪華な夕食が出来上がった。

恥ずかしいことに、漫画の世界でよくある、新婚夫婦の「アーン」をやってしまった。
はたからみたらバカ丸出しだっただろうな。 まぁ新婚気分には間違いなかったけど。

「こういうのってやっぱりいいな」後片付けをしながら、早紀はいう。
「なんで?」
「昔はね、お母さんと二人で住んでた頃は、お母さんパートで忙しかったから
 私がひとりでご飯食べてたりしてたんだよ。」
「・・・・・」 
「去年の、11月ごろだったっけ? 今のお父さんと再婚して、お兄ちゃんにも会えて、
 家族が増えて、一人でご飯たべなくても済むようになったから嬉しかった。」

そして夜もふけていった。

【11月3日 はれ】

あれから、ちゃんと調べてみた。
やっぱり親父と英子さんは、ちゃんと籍を入れてた。
つまり、俺と早紀も、兄妹だったわけだ。
でもそんなことは、もうどうでもいいや。

すっきりと晴れた、その日
小さいけれど、それなりの教会を借りて、
神父さんも呼んで、結婚式をあげた。

席では、親父と英子さんの二人だけ、座っている。
ひざの上では、手を繋ぎながら。
姉貴も呼びたかったけど、相変わらず、行方不明。
でもまぁ、あの姉貴なら、どこかで元気にやってるんじゃないかな。

ステンドグラスから、太陽の光がさしこむ中、
家族に見守られながら、

俺と早紀は

指輪の交換をした。

早紀と出会ってちょうど1年目の、今日この日の出来事。

【2年後】

早紀の主治医の先生から連絡が入った。
近くの大学病院で引き受けてくれる事が決まった。
症例の少ない難病のため研究という名目で治療費は免除になるそうだ。

俺と早紀は兄妹から夫婦になって2年間、とても幸せだった。
裕福ではないけれど二人でいられるだけで幸せだった。

早紀は大学病院のベッドで眠っている。
一日のうち起きていられるのが2時間くらいになってしまい食事もままならないので一昨日入院した。

早紀がうっすら目を開ける。
「お兄ちゃん?」
そう、結婚して2年が過ぎても呼び方だけはお兄ちゃんだ。
「早紀、何か食べられるか?」
「ううん、いらない」
早紀は以前と何も変わっていない、ただ眠っている時間が増えただけ、それだけ。
「早紀・・・」
「なあに?」
「少し食べてくれよ、おなかの子供のためにも」
早紀の顔が急に明るくなった。
そうこの2年間、早紀が本当の眠りにつくまえに子供が欲しいというのは二人の願いだった。
それが、今にでも早紀の意識が遠くへ行ってしまうという時に妊娠がわかった。
「男の子かな、女の子かな」
「早紀と俺の子だ、どっちでもいいよ」
先生は反対したが、俺は子供を生めるよう先生に頼み込んだ。
生まれて初めて土下座した。

「早紀、やっぱり先生は反対したんだけど生みたいだろ?」
「あたりまえでしょ!」

やっぱり・・・

「次に早紀が目覚めるときは隣に赤ん坊がいたりして」
早紀は春の蒲公英みたいに明るい笑みを浮かべて、そしてまた静かに目を閉じた。

そして、その時から目覚める事はなかった。

死んだわけじゃない、ただ寝てるだけ。

会話が一方通行になっちゃったけど、毎日話はできる。

家族が一人増えた。

いつか三人で暮らせるといいね。

コメント:

コメント: momo [メンバー]
久々に、胸キュンしました。
小説ってなかなか買って読まないのですが
こうやってブログだと読みやすいし良いですね。
永続的リンク 2005/12/03 @ 00:51
コメント: Mura3 [メンバー]
まいど!
続編は少し先になります。。。

年内は無理かも・・・

そちらもヨロシク!
永続的リンク 2005/12/04 @ 09:23
コメント: Shinobee [訪問者] · http://shinobee.exblog.jp/

続きまだかなぁ・・・と思っていたら、いきなり最終回でビックリ~!

一気に読み上げてしまいました。
最後のとこ、マジ泣けました。
もっかい通して読んでみよ~っと。

続編も楽しみにしてますね!!


永続的リンク 2005/12/05 @ 08:56

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