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いくいく Mura3

カテゴリ: 短編小説

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ほしぞら

学生時代に見切りをつけて社会に出てから何年たつだろう。。。
通勤、特に帰り道は極力歩くことにしていた。
それは星空。
それは月。
それは夜の透明感がある空気。

曇りの日や雨の日も、嵐の日もあった。
悲しい日や疲れ果てて歩くのがやっとということも。
でも歩き続けた。
辛くても上を向いて歩いていればいつかきれいな夜空が癒してくれるという安心感があったのだろう。

私がこの歳、つまり歩く必要がなくなる日まで星達や月、透明な空気は変わることなく仕事の疲労を癒してくれていると感じることができた。

歩く必要がなくなった、そのお祝いにと子供達が旅行をプレゼントしてくれた。
それは、長野県の北にある峰の原高原。

そこで見た星空に私は驚き、そして自然と流れ出る涙がとまらない。
そこには、私が社会に飛び出たばかりの頃、打ちのめされたり疲れきった心と体を癒してくれたあの夜空があった。

年が経つにつれて街の夜に人工的な明かりが灯り、それが数を増すごとに夜空はその輝きを失っていったのだろう。
しかし毎日のように夜空を見上げていた私には、その変わり様に気が付くことすらできなかった。
そして、知らぬ間に心の闇が広がっていたことに。
きっと、それが大人になることだと気が付かない振りをして自分の意識の外に追いやっていたのかもしれない。

確かに街は豊かに活気づいて、夜も多くの人でにぎやかな都市へと変貌をとげていた。

私がまだ子供の頃、父が教えてくれた。
「辛くても上を向いてあるくんだ、そうすれば明日が自然とみえてくる」

今の若者は、何を求めて「上を向く」のだろう。
何に癒され、何に希望をつなぐのだろう。

大人になってしまった私には、そんなことすら見えなくなってしまっていた。

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