• 長野県須坂市常盤町804-1
  • 026-214-9141
須坂市公認ポータルサイト・いけいけすざか

投稿の詳細: 投票で村役人選出「役替入札人別帳」

2023/01/11

投票で村役人選出「役替入札人別帳」

11:42:25, カテゴリ:  

「もんじょ紹介№5齋藤和義家文書」から
投票で村役人選出「役替入札人別帳」

 須坂市議会議員選挙が1月29日告示、2月5日投開票の予定です。私たちの代表は選挙により選出されますが、江戸時代はどうであったのでしょうか。
江戸時代、幕府や藩は、農村などを支配するために代官や町奉行といった役職を置きました。農村では、村役人を通じて幕府や藩の命令が農民たちに伝えられました。村役人は村方三役とも言って、名主、組頭、長百姓(地域・時代により呼称は違う)の三役があり、通常の村の行政は、村役人らを中心に進められました。
名主は、村の責任者として村民を代表し、村民の行為に対しても連帯して責任を負っていました。同時に実務面では、年貢の割り付けと徴収、水利土木に関することから、宗門改め・宗旨送りなど戸籍に関すること、風紀・消防・衛生や警察的な治安に関すること、訴訟の仲裁・各種の証明など村政の全般にかかわっていました。組頭は名主の仕事を補佐し、長百姓は村民に代わって名主の仕事を監視する役目をもっていました。
 これら村役人の決め方はさまざまであったようです。今回は名主など村役人を選挙で決めた記録です。

①役替入札人別帳 正月25日
訳替入札人別帳

②「忠兵衛・勘左衛門・宇右衛門・茂左衛門・新左衛門・・・」93人の名前が列記されていますが、これは福嶋村の有権者あるいは投票者でしょう。
人別帳1

人別帳2

人別帳3

次は入札(投票)の結果です。
③「名主」は、名右衛門に◯が51、勇左衛門26、九兵衛15で名右衛門が投票総数92票の過半数を得て当選。
④「組頭」は、定数2人に12人の候補者が上がっています。市郎治が58、源之亟丞が35で当選。次点は27の新兵衛です。この役には3人の0票が見られます。入札総数は177です。
⑤「長百姓」も定数2人。九兵衛が49、勇左衛門が44で当選。また名主選でも両人はそれぞれ15票、26票を得ています。一方名主に当選の名右衛門も22の入札でした。なお、この長百姓の入札には、候補者らしき名が11人挙がっていますが、そのうち1人は1票、2人は0。入札総計は174となっています。

入札結果1

入札結果2

⑥入札で選ばれた福嶋村三役の名を記す職奉行あて文書

職奉行宛文書

この開票記録から福嶋村の役人入札方式を推測すると、まず役員候補を挙げる(自薦・他薦のいずれか、或いは両者か)。次いで各自が各役職について定数内で連記する投票方式が想定されます。

※村役人の決め方をめぐって、須高地域の記録から
◯安永6年(1777)5月幕府領の井上村で「年貢勘定をめぐって小前騒動起き9月の村定めに、名主1人として総村中入札と極める。」(須坂市史)
◯文政8年(1825)椎谷藩領の中山田村方騒動の済口証文に「名主役の儀は、3ヶ年番、入札と相定(中略)、かつ組頭、百姓代なども右に準じ3ヶ年と相定め候事」(高山村村史)
など投票による村役人の選出の動きを見ることができます。

次回は名主などを世襲により決めていた文書を紹介します。