当館開館20周年記念として、今年度は一年を「きものイヤー」として、4つの着物展に取り組んでいます。
現在開催中の「小袖‐江戸女性のファッション‐」は、中でも特別展です。
当館で収蔵する着物は、大正末期から昭和期のものが中心なので、江戸時代のものを展示する機会は大変貴重です。
今回は、当館で収蔵する「着物」の原形である「小袖」をぜひご覧いただく機会をつくりたいと考え、きもの文化の伝承と文化財保存を目的として、個人の方が収集したコレクションを出品協力いただき、実現した展覧会です。
「小袖」とは、袖の大きさに関係なく、小さな袖口をもった衣服の総称で、現在の着物の原形です。
平安時代に、その形が出来上がり、当時の支配階層であった公家の装束の表着「大袖」に対して、「小袖」が存在しました。
公家は、大袖の下着に絹製の小袖を着用し、庶民や武家(庶民から身を立てた)は、麻製の小袖を下着や表着として用いました。
鎌倉時代以降、社会の支配階層が公家から武家へと移り、桃山時代には経済力をもった町人が現れます。そんな社会状況を背景として、庶民や武家が着用していた小袖が絹製となり、服飾の中心に移り変わり、華やかな加飾技法が発達していきました。
江戸時代の封建社会の中で、桃山時代にはほとんど違いのなかった男女間の衣服の違いが生じました。
「表」の世界にいる男性は自由な衣服選択がほとんど許されず、一方「奥」の世界とされる女性には、社会秩序を乱さない限り、比較的自由がありました。
そのため、身分・階層の違いによる好みや美意識が小袖に反映されて、時代による様式の変遷や流行現象が現れ、小袖のファッションが華開いていったのです。
また、『小袖雛形本』という出版物が刊行されていました。
これは、小袖模様が多数収録された、当時のファッションブックといえます。
見て楽しむだけでなく、小袖の注文にも使われていました。
本展では、小袖とあわせて雛形本を展示しています。
当時の女性たちが、見て楽しんでいたかと思うと、心ときめかせた気持ちが手に取るように分かる気がします。
江戸時代に、このような多彩なファッションが繰り広げられていたということに、間近に触れて、改めて驚きを覚えました。
ぜひ、江戸女性のファッションの世界をお楽しみください。
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