文書館収集史料紹介
「大東亜戦果学習絵図」(牧幸一郎家文書から)
7月19日から9月8日まで「2024須坂に残る戦時資料展」を開催し、展示期間中「文書館だより」で3回にわたり展示史料の紹介をしてきました。本年は著名画家が描いたポスター・絵葉書等を展示しましたが、童画家も子ども向けの絵図作成に携わっていた資料をご紹介します。
「大東亜戦果学習絵図」はアジア太平洋戦争中、子ども向けに作成・販売された絵図で、展示の絵図は昭和18年12月15日発行の第41版です(初版は昭和17年に発行されています)。編纂及作図者:畠野圭右、発行:国民教育練成会で、販価は1枚25銭となっています。
編さん及作図者の畠野圭右は、『イソップ繪物語』『三びきのこねこ』『こどもおぎょうぎ絵本』等(小学校の図書館にはあったと思います)で知られ、大正・昭和期に活躍した童画家です。子ども向け絵図のため作成に関わったのでしょう。
【絵図】
全体図だけでは見づらいので4分割にしてみました
(分割図 左上)
(分割図 右上)
(分割図 左下)
(分割図 右下)
大東亜共栄圏は東アジアから東南アジアにかけての一帯を指していましたが、この地図ではアメリカ軍の基地がある東海岸まで描かれています。
また、地図の特徴として各地の資源・産物が細かく描かれています。これは「大東亜共栄圏構想」が、豊富な資源がある当該地域に日本を中心とした「道義に基く共存共栄の秩序を確立」を目指すこととしていたためです。
絵図の初版は1942年(昭和17)に発行されており、発行の計画は1年以上前には立てられていたものと思われますが、1942年6月のミッドウェー海戦で日本軍は大敗北を喫し、制海権・制空権を失い、以後は各島で撤退が始まります。
この絵図は国民学校の授業で使われたもので、裏面に学年・氏名が書かれています。子どもたちは大本営発表を聞き、この地図で授業を受け、大東亜共栄圏の建設に向け、絵図に記された戦果が続いているものと信じていたのでしょうか。
◆文書館収蔵史料(古文書類、旧町村文書、移管行政文書等)は閲覧等申請していただければご覧いただけます。
※ 申請されてからご希望の史料準備で7日間ほどいただきます。
※ 文書館収蔵史料については、文書館においでいただくか、遠方の方はご連絡ください。
◆次回展示ご案内
須坂市制70周年記念展「須坂市誕生と町村合併の歴史」
期間 9月13日(金)~10月31日(木) 午前9時~午後5時
期間中無休
会場 文書館展示室(旧上高井郡役所内)
観覧料 無料