信州須坂町並みの会「町並みかわら版創刊号」(信州須坂町並みの会文書から)
(展示紹介)
文書館では、2024年5月17日文化審議会が「須坂市須坂伝統的建造物群保存地区」を重要伝統的建造物群保存地区に選定することを文部科学大臣に答申したことを記念して、当市において町並み景観の保存に先導的に取り組んできた「信州須坂町並みの会」の活動などを同会から寄贈を受けた文書・写真により7月15日まで展示しています。
町並みの会では広報紙「町並みかわら版」を随時発行していましたが、今回は創刊号(1987年1月発行)から設立総会で記念講演をされた市川健夫氏と宮本忠長氏の講演主旨(須坂新聞提供)を抜粋してご紹介します。
【町並みかわら版】
■市川健夫氏「全国有数土蔵の町須坂」
〇町並みは都市やマチの顔であり、その風格を示すものである。明治以降生糸の町として発展した須坂は、アメリカ市場と直接つながっていた国際都市であり、そこに蓄積された富が美しい町並みを形成させた。
〇経済の高度成長を通じて、衣食住などの画一化が進んだ。この結果、日本のどの都市を訪ねても、風情のない町並みとなり、潤いが感じられないものが多くなった。
〇都市景観の整備は、単に町家の建物群ばかりでなく、街路樹や広告、都市公園を含めたものでなければならない。
〇臥竜公園や土蔵造りの町並みなど、須坂市では先人の遺した偉大な遺産を生かした町づくりを進めていくことが望まれるのである。
■宮本忠長氏「須坂市の町屋の特色」
〇須坂の大壁づくりの町屋を見て回った。課題はどうやって活力を与えるかだ。町が豊かになるには地場産業などを集約する必要がある。須坂ぐらいの規模は難しい。
〇保存というとすぐ博物館だ。家は風雨にあたる生活があって末代まで残る。郷土愛がなければ芽生えてこないし、根付いて活力にならない。野ざらしのまま建物を生かすことが保存だ。不便さはあろうが、後世のためにも残したい。不便さを出しつつ改善・改良をしていくことで、町並みがつくられてきたし、これからの町づくりになる。
〇牧家などの大壁造りの町屋は須坂の風土だからで、飯山ではムリ。個人の財産ではなく町の財産ともいえる。マユ倉庫も積極的に演出し、活力あるものにしたい。横町の小林家などは、店が街道に面した平入り、母屋が直角に棟をなし破風を見せ、須坂の町屋の典型である。本町通りは連続的町屋が通り門でつながり、奥行きと人の温かさを感じさせる効果を持っている。多くの町屋のスカイラインが美しい。新町などは平入と妻入りの棟が不連続をなし、暁のシルエットがきれいな街並みである。櫓のあるお茶屋、薬屋さんなど町の顔である。小田切家の門構えも町の顔で気張っているより、和やかに語りかけている。
※展示は次のとおり行っています。
会 場:須坂市文書館展示室(旧上高井郡役所内)
会 期: 7月15日(月・祝)まで(土・日曜日、祝日も観覧可)
開館時間:午前9時~午後5時
観覧料:無料
お問合せ:須坂市文書館(026-285-9041・平日のみ)
◆須坂市では、答申を記念して以下のとおりシンポジウムを開催します。
1 日時 2024年7月28日(日)13:00~16:30
2 会場 生涯学習センター3階ホール(常磐町)
3 内容
(1) 基調講演
① 『保存地区のこれまでとこれから』 西村 幸夫氏
② 『保存地区の特徴と価値』 土本 俊和氏
(2) パネルディスカッション
詳しくは須坂市ホームページをご覧ください。
https://www.city.suzaka.nagano.jp/kanko_bunka_sports/bunka_rekishi/9/5303.html