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投稿の詳細: 日滝原への出作り農民

2024/06/12

日滝原への出作り農民

10:44:59, カテゴリ:  

日滝原への出作り農民(日滝史蹟保存会文書から)

江戸時代、須坂藩領であった日滝原は松川扇状地扇央部にあり、耕土が薄く水に恵まれない干害(旱魃)の常襲地で、農地には適さない土地でした。それでもわずかな収穫を求めて農民たちは開墾開拓に汗を流しました。今回ご紹介する文書は日滝原へ出作り(他領から耕作に来る)をしていた奥山田村、中山田村、牧村(共に幕府領)の農民たちが年貢等の軽減を須坂藩役所へ願い出たものです。
本文書を所蔵する(一社)日滝史蹟保存会は、本郷町在住で入会を希望する方で構成され、地域内の史跡の保存、史料蒐集及び研究などを行っています。同会文書は、本郷町のみならず、広く旧日滝村に関する文書が収蔵されています。

【039-A1-28】
039A1-28-1
039A1-28-2

【読下し文】
恐れながら書付けを以て願上げ奉り候おん事
一 拙者ども村方の儀高山麗薄地の村方ゆえ大麦、大豆等決して作られも申さず、これに依りご領分日滝村・大谷村・高橋村右3か村分へ越石仕り、お年貢お役等相勤め渡世仕り候。左の村々より手入れ最寄り場にてご座候ゆえ、古来より右の畑方相続仕り候。別けてご領分の内にても右原の義は石原薄地旱魃場にて三か年に二年は半毛の損毛多くご座そうらえども、これまで御訴所申し上げ候事これ無く候。然る所に当春中より雨継ぎ不順にて麦作とても半毛の損毛及び難儀に候。そのうえ当六月中旬の頃より度々大風は吹き散らし、日々に照り増し諸作生い立ち申さず少々これ有り候大豆、ささげ等残らず立ち枯れに罷り成り、迷惑至極仕り候。尤も世の中一統の旱損定めてご領分の村々よりも日々にご注進等これ有るべく処、分けて拙者どもお願い申し上ぐに及ばず候えども、何十年にも伝え聞かざる大変ゆえ、お年貢の義格別当時飢え及び身命を送るべき力も無き難儀の余り、先だってご注進も仕るべく所に他のご領分ゆえ恐れ多く見合わせ指し控え罷りあり候。然る所昨十九日の朝少々雨降り申し候らえども、一向立ち帰り申すべくは之なく、種を失う大難無是悲お願い申し上げ候。お慈悲にお年貢弁納に成らぬように おん上様へ 仰せ上げられ下し置かれ候ように願い奉り候おん事。
一 前々より去る未年までお値段の儀、世の中市相場等によらず高値に仰せ付けられ候えども、ご領一統の儀にご座候ゆえ、よんどころ無くお請け仕り候。これらの義お願い申し上げたく村々出作り多く、この百姓ども年久敷く心がけ罷りあり候えども、これまで延引に及び候。当年旱損(かんそん)皆無の上右の例を以って仰せ付けられ候ては一向お年貢ご上納も難しく成り候。然りながらご定法をもって仰せ付けられ候事是悲に及ばず候。左もご座そうらわば、とてものお慈悲に酒屋・穀屋などへのお払い値段同様に願上げ奉り候おん事。
一 ご領分相森分へご納所の義 ご公儀様ご勘弁をもって二ツ五分、三ツ五分等のご定免にて諸掛り物ご赦免成し下され候ところ、近年先納ご用金等年々仰せ付けられ難儀仕り候。ご用金等仰せ付けられ候義にご座そうらわば、相森お百姓同様に成し下され候ようにお願い申し上げ候、以上。
右の趣聞きなされ、右分願いの通りご考弁の上、ひとえにご慈悲仰ぎ奉り候、以上。
 明和元年申の八月日
   高井郡奥山田村
     出作百姓惣代 文右衛門
               長右衛門
   同郡中山田村
     右同断 庄兵衛
       〃  利左衛門
   同郡牧村
     右同断 茂左衛門
       〃  利左衛門
       〃  清三郎
       〃  与兵衛
須坂 御役所

【解説】
私共(奥山田・中山田・牧)村は、高い山麗のやせ地で麦や大豆もできないので、(須坂藩)ご領の本郷、大谷、高橋へ昔から出作りをしていますが、ここも土地が悪く日照りで三年に二年は半分も収穫はありません。それでも我慢してきましたが、今年は春から雨不足で麦も半作、その上六月中旬ごろより大風が度々吹き荒れ、日照りがひどくなり僅かに生き残っていた大豆やささげも立ち枯れてしまいました。何十年にも聞かない大旱損で、これでは来年の種さえ取れず、飢え死にしてしまいます。どうかお年貢は勘弁願います。
一前々より年貢は高値でしたが、これは領内一統のことですので出作り百姓も我慢してきましたが、今年のような収穫皆無の年には、ご慈悲をもってせめて藩から酒屋や穀屋などへ払下げになるほどの(安い)値段でお願いします。
一 須坂ご領分の相森分については、ご公儀(幕府・代官)様から年貢は二割五分とか三割五分の負担で、その他は御免とされていたのに、近頃は先納金(献金)を仰せ付けられて難儀しています。ご用金等仰せ付けの場合は相森のお百姓並にお願いします。
右の願い事をよくよくお考えの上、お慈悲を仰ぎ奉ります